第14章 【病的な兄】
「そう言うけどさ、」
ある日、力は言った。
「あいつ危なっかしいんだよ、西谷に手ェ触られても平気な顔してるし。」
「平気な顔してるのか、困ってるって話聞いたけど。」
成田が困惑して言う。
「困るの方向がズレてる、ヒョロヒョロって言われる方を気にして肝心のトコを気にしてない。」
う、うん、と成田は言うしかない。
「それにすぐ自分で自分のこと貶(けな)すし、おばあさんが箱入り娘に育てたらしくて世間知らずだし、気をつけてやらないと。」
おいおいと声を上げたのは木下である。
「だからってお前がそんななんもかんも世話焼くこたないだろ。まったく何も出来ないわけじゃなし。」
「美沙はいいけど周りが何するかわからないだろ。」
あまりの事に木下は成田をばっと振り返り、成田は首をゆっくり横に振った。
力はそんな仲間の様子を見なかったふりをし、着替えにかかった。
次章に続く