第14章 【病的な兄】
旧姓薬丸美沙が妹になってからというもの、ぶっちゃけ縁下力は彼女に夢中だった。
美沙の見た目は地味だ、別に美人でもない。これは他所からも指摘されるし本人も外見コンプレックスがひどい。
しかしその辺はまるっきり無視で縁下力は義妹を可愛いと思っていた。
もちろん力は口に出して公言はしていない。大多数から賛同を得られないのをよくわかっているからである。とは言え美沙に接する態度から滲(にじ)み出ているので意味があまりなかった。
とりあえず縁下力に美沙のどの辺が可愛いのかもしこっそり取材出来たら彼は次の通り答えるだろう。
褒めてやったらものすごく照れる。
可愛い。
好きな食べ物が出たらもう顔が笑っている。
可愛い。
よくわからないとか考え事があると首をかしげる。
可愛い。
対外的には強がって平気な顔をしているが実は寂しがりの甘えん坊である。
可愛い。
おちょくるとムキになって突っ込んだり膨れたりする。
可愛い。
田中や西谷では考えられないネタを繰り出す。
これは可愛いというより面白い、かもしれない。
思わぬプレゼントをもらったりすると恥ずかしそうに笑う。
可愛い。
何か希望がある時遠慮がちに言う。
可愛い。
来てから日も浅いのに自分を慕ってくれている。
可愛い。
嘘ついても隠しきれていない。
可愛い。
もう病気の域である。実際、男子排球部の中でも成田や木下に突っ込まれている。他の事は今まで通りいい意味で冷静かつ常識的であり、場合によってはうまいこと強権発動させるのに美沙に関してだけおかしなことになっているので周りは余計心配だった。