第13章 【義妹の突撃】
「兄さん出えへん。」
休み時間、美沙は唸っていた。隣の席の谷地がどうしたのか尋ねてきて、美沙は事の次第を話す。
「え、縁下さんお弁当忘れちゃったんだ。大変っ。」
「せやねん、せやのにメールしてもメッセージアプリから連絡しても反応ないねん。」
「ありゃりゃ。電話は。」
「あかんかってん。」
美沙と谷地はしばらく沈黙する。しばらくそうしていたが、
「あかん、これはあかん。埒(らち)があかん。」
美沙は覚悟を決めた。
「ちょお私行ってくるわ。」
「私も一緒に行こうか。」
「いや、流石に谷地さんにまで来てもろたら悪いで。ありがと、とりあえず行ってくる。」
「いってらっしゃーい。」
谷地に見送られ、美沙の足は2-4の教室へと向かっていた。
本当のことを言えば上級生のフロアに行くというのは美沙のような人見知りだとかなりドキドキするものがある。
だがしかし美沙は義兄に弁当を届けるのを重要かつ優先度が高い仕事と認識していて、一刻でも早く完遂すべしと思い込んでいた。
思い込みの力は偉大なもので、おかげで美沙は2年のフロアに来ても物怖じせずに歩き続け、2-4の教室にたどり着いた。