第11章 【義兄の恐怖】
縁下美沙は困っていた。
「あの、西谷先輩。」
「うーん。」
「何唸ってはるんですか、私の腕そんなにおかしいですか。」
西谷は掴んだ美沙の手首をマジマジと見ていた。
「やっぱり俺の手でも指余るっ。」
「はぁ。」
美沙は間抜けな返事をするしかない。確かに西谷は同世代の野郎共の中でも小柄だがではその西谷に自分の指でも余ると言われる美沙の手首周りはどうなるというのか。
「相変わらずお前ヒョロヒョロだな、美沙。大丈夫かっ、力に遠慮してねーかっ。」
「いやあの西谷先輩、大丈夫ですから、むしろ大事にされてますから。って、この会話何度目やっ。」
美沙は思わず平手突っ込みをし、隣の席の谷地に助けを求める。
「谷地さん助けて、この人毎回毎回測定してくる。」
谷地はあははと苦笑するがおそらく彼女単体では西谷を止められないのだろう。顔がごめんね美沙さんと語っている。
「そもそも西谷先輩、谷地さんへの御用は済んだんちゃいますのん、なんでついでに人の腕の測定しはるんですか。」
しかも細い点では谷地も一緒である、何で自分ばかり影山や西谷にヒョロヒョロと言われなくてはいけないのか。
「だってお前身長の割に細っこいんだもんよ。力が隣にいたらもっと目につくっ。」
「せやからていちいち測る人があるかいなっ。」
「いーじゃねーか、減るもんじゃなしっ。何か心配になんだよ。」
「ご心配はありがたいんですけど西谷先輩の寿命が減る思いますよ。」
「何でだよっ。」
「そりゃまぁ、」
ここで谷地が遠慮がちに口を挟み、廊下側に目をやった。谷地の目の向け方が妙にそろーりとした様子だったので美沙は物凄く嫌な予感がして自分もそろーりとそちらに目を向ける。