第9章 【編集依頼と報酬】
さて、撮影の後も話は終わらない。
「今何て言うた。」
美沙は義兄に聞き返した。
「編集頼むよ。」
つまり前回無理矢理美沙も踊らせて撮影した映像の事である。
「無理。」
「やって。」
相変わらずにっこり笑って引かない力である。
「私は静止画並べるのしか作った事ない。」
「お前、編集用のソフト持ってたよね。あれ映像も読み込めるんじゃないの。」
「何で知ってるんよ。」
「じゃ頼むね。」
「待てこら、せやから無理やってっ。」
力はふーんと言ってにっこり笑う。美沙は寒気が走った。
「美沙、」
「は、はいっ。」
「編集出来ないってんならお前のパソコンに入ってるお絵描きソフト、編集ソフト、動画サイト投稿用に変換するソフト、各種動画再生用の何とか、」
「なんとかってそれはコーデックです、兄さん。」
「あとは字幕読み上げ用合成音声再生ソフト、そんで音声編集するソフトとかは何なのかな。」
「えと、」
「ろくに使ってないとか言うなよ、音声の音量調整したり動画を投稿用の形に変換してるのを俺が知らないとでも。」
当然知らないと思っていたので美沙は更に背筋が寒くなる。
「とりあえず質問なんやけど。」
「何。」
「お絵かきと動画編集以外で何で入ってるソフト知ってるんよ。」
「お前がパソコンに処理任せてぐーすか寝てる時に見た。タスクバーにどんだけ出してるんだ、面倒くさがり。」
「コーデック云々は。」
「それもお前が寝てる時にブラウザ開きっぱなしなのを見た。何のことかすぐにわかんなかったけど検索結果のタブも開きっぱなしだったからさ。」
観察力のある義兄を持つと厄介だと美沙は思った。基本的に見られて困る事はしていないが微妙な心持ちである。