第8章 【撮影】
次の日以降、美沙は義兄に見せられた動画をパソコンとスマホの画面に穴が開くんじゃないかと思う勢いで閲覧したり、昼休みに中庭でこそっと練習したりしていた。たまに月島に見つかって笑われ、日向に俺もやるとか言われ、影山に硬直され、文句を言っても義兄は聞いてくれず、しかし谷地には応援されるというわけのわからない状態が続いたのは言うまでもない。
そして数日後。
「じゃあ行くよー。」
力がビデオカメラを三脚に据え、足元にラジカセを置く。
恐ろしい事に力は本当に主将の澤村や菅原に根回しをし、上手い具合に人払いをして事を実行に移してしまったのだ。美沙としてはやけっぱちで乗るしかない。
「待って、兄さん。」
「美沙、早く。あ、成田はもっと寄って、見切れる。」
「しっかしまさか縁下妹がセンター入るとはなぁ。」
田中が意外だと言わんばかりに言い、成田も
「よくやる気になったね。」
と苦笑する。
「いやそれが成田さん、兄にしてやられまして。」
「それでも逃げないんだからすげーわ。」
木下が呟く。
「創作活動に関わる事はないがしろに出来ず。」
「美沙、言ってる事が難しすぎてよくわかんねーぞ。」
「西谷先輩の前で言うた私がアホでした。」
「アホって言うなっバカと言えっ。」
「使い方逆の文化で育った人に無茶言うたらあかん。」
「おーい、もういいかい。」
「ええよ、兄さん。」
「よし、じゃあ、3、2、1っ」
ラジカセから音楽が響き、美沙と野郎どもは踊り出した。