第56章 【一旦の終わりと広がる物語】
「ったく何なんだ、揃いも揃って。」
「すみません。とりあえず人目がアレなので場所移しませんか。」
力が呟いた。ふと気づけば通行人が最近の若い衆はと言いたげにこちらを見ていた。
という訳で義兄妹とバレーのコンビは近くの公園に移動した。都合よく公園がある点は深く考えてはいけない。
「さてと、だ。」
ベンチに座って早速岩泉は言った。
「とりあえずクソ川からきーたけど、ほんとしょうがねえ兄妹だな、お前らは。」
力はアハハと乾いた笑いをし、美沙はうつむく。
「ねー、ずるいよねー、縁下君ずるいー。」
「ボケ川、おめーはもう黙れっ。」
「ひどっ。」
岩泉に罵倒された及川はブーたれる。彼のファンが見たらどう思うやらわかったものではないノリだ。
「おっしゃることはわかります、岩泉さん。」
一方、力は静かに言った。
「でも、」
「ああ、ああ、何となくわかるわ、お前もどうしたってそこの半分ボケがよかったっつーんだろ。だからしょうがねえ兄妹だっつーんだ。」
岩泉は頭をガリガリかきながら言った。
「烏野の連中は、知ってんのか。」
「伏せてますけど一部には勘付かれてると思います。籍入れろとかまで言う奴いるし。」
「無理もねーわな。」
「すみません。」
「謝れってんじゃねーよ。」
岩泉は一旦息をついた。
「後悔は、してねーみたいだな。」
「ここで諦めて我慢する方がきっと後悔します。俺はそういう奴です、多分美沙も。」
やれやれだ、と岩泉は呟いた。
「おい、烏野の6番。」
「俺は縁下です。」
「どうも覚えらんねえな。そこまで言うんだったらそこの半分ボケをちゃんと守れよ。」
「もとよりそのつもりですよ。俺も大概美沙に守られてますから。」
「万一途中で放ったらかしたりなんざしたら即クソ川に引き渡すかんな。」
「それは困りますね。」
力は苦笑する。
「ありがとうございます。でもご心配には及ばないかと。」
「祈るだけ祈っとく。で、だ。」
一通り話を終えたところで岩泉は相方をジロリと睨んだ。