第8章 【撮影】
「あ、因みにお前センターね。」
「なんでっ。」
「野郎ばっかじゃ花がないじゃん。」
「いやや、私かて不細工やもん、谷地さんにやってもらいーよ、私よりずぅっと可愛いやん。」
さらなる無茶な義兄の要求に美沙は外見を理由に抵抗を試みた。流石に絵面くらいは考慮するだろうと思ったが
「頼んだけど今回は丁重にお断りされた。」
その前に何かに出演してもらったことがあるのかと美沙は突っ込みたい心境である。いずれにせよ見込みは甘かったようだ。
「とりあえずお前自信持っていいから。俺、絵面の心配はしてないよ。」
「いやいやそもそも私人見知りの小心もんやしっ。」
「でもお前一度腹括ったら何とかするだろ。」
「いやあのね、兄さん。」
まさか義兄相手にここまで突っ込むとは思わなかった、美沙は突っ込み疲れしそうな勢いである。
「とにかく私嫌や。」
「じゃ頼んだよ。」
「話聞いてぇなっ。大体どこで撮るんっ。」
「第二体育館、今度練習終わったら撮るから。」
「しれっと言いなっ、武田先生とかコーチの人とか澤村先輩にどない言うんよっ。」
「自主練しますって言うよ。」
「それ罷(まか)り間違ったら東峰先輩とか影山、日向が本気にするで、巻き込むかもしれへんやん。」
「ああそうか、お前賢いね。大地さんには正直に言ってうまいこと人払いしてもらおうか。菅原さんも味方にしよう。」
「ちょお兄さん、ええ加減にしてやっ、何でやる方向で話進んでるんよっ。」
「お前さっきからさ、関西弁で怒鳴っても全然怖くないよ。堅気の言葉はまるっこくて迫力ゼロなんだね。」
義兄はよしよしと美沙の頭を撫でる。関西弁について義兄が理解を深めてくれたことは結構なことだが今問題はそっちではない。