第8章 【撮影】
義兄のその依頼は突然きた。
休みの日のことである、珍しく部活が休みの義兄の力が美沙の部屋にやってきた。
「美沙、頼みがあるんだけど。」
「なぁに。」
「ちっとパソコンネットに繋いで」
「うん。」
「ここの動画サイトなんだけど。」
「えっと。」
美沙が義兄に誘導されて見たのはとある楽曲に合わせて複数人が踊っている動画だ。
「これ踊って。」
「はい。」
美沙は思わず疑問形で声を上げる。聞き間違いかと思った。しばらくパソコンの画面と義兄の顔を交互に見る。
「無理無理無理っ、こんなん無理っ。」
「振り付けくらい覚えられるだろ。」
「私短期的な記憶は自信ない。」
「時間があるなら記憶可能アンド長期に渡って保持出来るって事だよな。」
「そもそも運動できひんの知ってるやろっ。」
「心配ないよ。」
「体力測定の柔軟で悲惨な結果を叩き出した人に何ちゅうことを。」
しかし義兄はにっこり笑ったまま後にひかない。
「そんなに体曲げないから。」
「そういう問題ちゃうっ。」
「じゃあ頼むね。2年の奴らも一緒だから。」
「話聞けええええええっ。」
流石の美沙もこればかりは義兄に対する礼儀もへったくれもない。
「勝手に決めるなあああっ、しかも2年の皆さんて田中先輩と西谷先輩はどーせノリノリなんやろけど木下先輩と成田先輩はどゆこっちゃっ。」
「頼んだら快く。」
「絶対嘘やろっ。」
「お前、仮にも兄を疑うのかい。」
美沙は今一瞬義兄の背中に真っ黒な羽が見えた気がした。