第55章 【自分で決めた】
「美沙さんってさ」
とある昼休み、山口が美沙に言った。屋上にて、谷地と月島も同席している。1-5の女の子ペアと1-4男子ペアがたまたま昼食にしていたらかち合った結果だ。
「苗字変わったんだよね。」
「うん、薬丸やった。」
「その、俺そういうのよくわかんないけど、学校では別に前の名前で通すってのもありだったんじゃないかなって。何で縁下で来たの。」
「あぁ、それ僕もちょっと気になってた。苗字目立つし2年に縁下さんがいるから勘ぐられるの必至だし、実際それで兄妹そろって無茶苦茶言われたりしてんのに何だってわざわざ面倒な事した訳。」
月島が口を挟む。
「月島、それは」
美沙は躊躇いがちに問い、月島が何か言う前に山口が素早く言った。
「違うよ美沙さん、ツッキーは美沙さんのせいで縁下さんが困ってるとかで責めてるんじゃないよ。」
「山口うるさい。」
「だってツッキー、本当の事じゃん。」
言い合う山口と月島に美沙は谷地に私悪い事したやろかという目を向け、谷地は美沙の肩をポムポムした。大丈夫だよという合図である。おかげで美沙は落ち着いて問われたことに答えた。
「そないしたかってん。」
「また。アンタたまに日向とか西谷さんみたいな答えになってない事言うよね。」
鬱陶しがっているように聞こえかねない言い方で月島が言う。
「そんなことあらへん。」
美沙ははっきり言った。
「確かに山口の言うみたいに、卒業するまでは薬丸で通してもええって今のお父さん達にも言われた。せやけど私逆に嫌やってん。」
「どうして。」
谷地が尋ねる。
「だってせっかく縁下さんちの子になったのに私だけ前の名前て何か、それやとずっと余所者のままって感じがして嫌やってん。」
「前の名前を捨てたかったんじゃないの。」
「ツッキーっ。」
嫌味っぽくいう月島に山口が声を上げるが美沙は動揺しなかった。
「それもあった。」
正直に美沙は言った。