第54章 【外伝 黒川の疑問と安心】
「個性的な妹のようだな。」
「でも箱入り娘でどうかすると天然なんで目が離せなくて。」
「兄さん、せやから私は天然とちゃ」
「うん、それ以上は言わせない。」
「ひどいっ、強権発動やっ。」
「当然だろ、これでも兄貴なんだから。」
「うう、帰ったら動画見まくったる。」
「それいつもだろ。」
黒川は更に肩を震わせた。ひょっとしたら彼を知る澤村あたりが見たら驚くかもしれない。
そうして義兄妹とOBはしばらく話に花を咲かせた。
「あ、しまった。もうこんな時間。」
「兄さん、お母さんから生存確認のメール来てもた。」
「大変だ。黒川さんすみません、お付き合いありがとうございます。」
「いや、こっちこそ。」
黒川は言ってじゃあな、と呟く。
「ありがとうございました、失礼します。」
縁下美沙もいい、兄妹は深々と頭をさげて歩き出す。
「縁下、」
黒川は少しだけ兄の方を呼び止めた。
「はい。」
「幸せ、のようだな。」
「はい。」
言う縁下力の目に迷いはなく、かつてを知る黒川は吹っ切れたような雰囲気も感じた。
「では、今度こそ失礼します。」
「ああ、またな。」
黒川は小さく手を振って兄妹の姿を見送る。
「チームも何とかなってるようだし、安心か。」
黒川は呟き、遠ざかっていく縁下兄妹の姿に背を向けて自分も歩き出した。
次章に続く