第53章 【水着姿】
一番の問題は平泳ぎが出来ないことで、美沙なりには奮闘したがクラスの連中は美沙の必死ぶりを面白がっていた。
1-5がプールで授業だったその時、男子排球部の田中がいる2-1が生物の授業の一環で外に出ていた帰りにプールの側を通りがかっていた。
なのでその日の放課後、部活にて田中が早速その話を持ち出した。
「おう、やっちゃん、1-5はプールだったんだな。」
「えええええ、あ、あははは、ソーデスネ。」
「何で最後片言なんだ。あとあれだろ、横にいたのあいつだよな、縁下妹。」
「ええまぁ。」
「しっかしアレだなー、ノヤっさんがよく言ってってけど縁下妹は確かにヒョロヒョロだなー。」
田中の発言に谷地が我が事のようにガーンとショックを受けてその場に崩れ落ち、清水が慰めにかかるが田中は話すのに夢中で気が付いていない。
「そうなのか、龍。やっぱりかっ。」
「おうよ、そんで案の定ぺったんだった。」
女子もいる部内でしかもこの場にいない仲間の妹について何も考えず好き放題に言う田中と西谷に月島はサイテーだという目を向け、山口は聞かなかったふり聞かなかったふり、とブツブツ独り言、日向は影山にぺったんって何のことだと尋ねて影山に俺に聞くなボゲこれで何回目だと返される。
「そっか、だから美沙はあんまり女子っぽくねーんだな。」
「またあいつ、態度物腰がアレだしよ。」
「おもしれーけどなっ。」
「ちげぇねえ。」
この愛すべき阿呆共は学習能力がないのかもしれない。
「うわっ、縁下っ落ち着けっ。」
義妹の外見について好き勝手言われた力の顔を見て青ざめた木下が力の腕を掴んだ。力は田中を屠(ほふ)りに行きそうな勢いだ。
「田中が死んじまうよ、やめろって。」
成田も慌てて木下に加勢するが力は2人をズルズル引きずったまま田中に近づいていく。
「田中。」
力に呼びかけられて田中はビクゥッッッとした。やっとまずい状況になった事に気づいたらしい。恐る恐る振り返る田中の目には顔は笑っているが目が笑っていない縁下力の顔が映った。