第51章 【ザリガニ釣り】
結局、釣ったザリガニは西谷が大方を引き取り、日向は自転車で山の向こうの自宅に向かい、美沙は力に連れられて家に帰る。
「兄さん、怒ってる。」
何も言わずに歩き続ける力に美沙が恐る恐るといった感じで尋ねてくる。
「怒ってないよ。」
力は微笑んで本当のことを言った。
「ちっと疲れたけどな。」
「うう、羽目外しすぎたかも。」
「まあな、本当ついてきてよかったよ。でもいいんじゃないか。」
「そうなん。」
「うん、お前も楽しそうだったし。あんな風に誰かとわいわいやること、今までなかったんじゃないか。」
「うん、せやね。」
美沙は笑い、力は可愛いなと欲目丸出しで思った。
後日このザリガニ釣りの顛末について力が目を離した隙に月島と影山以外の多くの排球部員が話を聞きたがり、西谷と日向は大変得意げにベラベラと喋った。聴衆は大変満足した訳だが、力は美沙の落下防止の為、咄嗟(とっさ)に抱きとめた点について菅原に冷やかされ木下と成田にはとうとう外でやりおったか、などと言われる羽目になった。
次章に続く