第51章 【ザリガニ釣り】
呆れた力は
「捕まえたで、じゃない、この馬鹿。」
美沙の頭を軽く押さえた。この場合は美沙相手でも阿呆ではなく馬鹿を使わざるを得ない。
「まったく、やっぱりついてきてよかったよ。」
「ご、ごめんなさい、兄さん。」
「あははは美沙、縁下さんに抱っこされてやんの。」
「え、は、抱っこて。」
日向に言われて美沙はやっと気づいたようだ。
「ふぎゃあああああっ。」
たちまちのうちに美沙の顔が真っ赤になる。その後ろで力がニヤリと若干黒さを感じる笑みを浮かべていたことを美沙は知らない。
「しかも怒られてるー、かっこわりっ。」
「そもそも日向が位置無理、パスとかなんとか言うたからやんっ。」
「あーっ、人のせいにしちゃいけないんだぞっ。」
「ほなソッコー無理とか言うんはどーなんよっ。」
「それはぁ、そんな時だってあるっ。」
「開き直りなーっ。」
「アッハッハッ、翔陽、美沙、楽しそうだなっ。」
「西谷、お前のポジティブにはいろんな意味で恐れ入るよ。」
「流石俺だぜっ。」
「褒めてないから。」
「それより兄さん、離して恥ずかしい。」
「しょうがないな、でも次やったら首に縄つけるよ。」
「絶対嫌やっ、怖すぎるっ。」
こうしてただでさえ高校生が付き添いありでザリガニ釣りに興じるというカオスの中、小川でわあわあと騒ぐ声が響いたのだった。