第51章 【ザリガニ釣り】
「で、美沙、来るのか来ねーのか。」
「えーとぉ」
美沙は考えた。
「行きます。」
結局のところ、好奇心に負ける縁下美沙だった。
西谷は大変喜び、力には俺からも報告するかんなっと美沙を置いて1人すっ飛んで行った。
「あー、ついおもしろそーな気もしてうん言うたけどやってもたかも。」
残された美沙は呟いた。
しかしいくら好奇心に負けた美沙でも一応義兄に文句は忘れない。
「ちょお兄さん、どーゆーことなん。」
「何が。」
図書室で勉強し、部活を終えた力と合流した美沙が言うと力はあろうことかとぼけた。
「何で西谷先輩に私ザリガニ釣りに誘われとる訳。」
何せ排球部の奴らと帰っていた為話が聞こえていた田中がぶっと吹き出し、月島は明らかに馬鹿にした笑い方、谷地と山口は気の毒そうな雰囲気で苦笑している。挙げ句の果てには菅原が
「西谷が、マジで女の子ザリガニ釣りに誘った。」
笑いを堪えようとしてピクピクしている。
「いいだろ、俺も付き添うんだから。」
「問題がちゃうやんっ。いやつい面白そうやからうっかり乗ったけど。」
「俺はそうなると思ってたよ。出不精の割には本当好奇心旺盛なんだから。」
「とりあえず何で付き添い。」
「年長が西谷だけのとこにお前入れるの怖いから。」
そんな兄妹の会話にまた木下と成田が反応した。
「付き添いありのザリガニ釣り。」
木下がブブブと吹き出している。
「木下よせよ、美沙さんに悪い。」
言う成田も笑っていてまったく説得力がない。
「あいつら一体何の話してるんだ。」
澤村が言った。
「楽しそうだな。」
呑気に言う東峰に澤村は妙な事にならなきゃいいんだが、と呟いた。
というわけでとある休日、とある小川で大変シュールな光景が展開された。
「ほれ、美沙もやってみろ。」
「んーと、あれ、うまく餌結ばれへん。」
「あはは、美沙へたくそー。」
「日向やかましで。」
「てかノヤっさん、釣れないっす。」
「そこはお前、辛抱ってもんだ。」