第49章 【谷地の主観】
「あの、美沙さん。」
谷地はふと思って尋ねた。
「何か雰囲気変わった。」
「はて。」
首を傾げる美沙の喋り口調はいつもと変わらなかった。
「特に心当たりはないんやけど、何で。」
「何というか、ちょっと柔らかくなったっていうか。」
「ガーンっ、そら私よう日向に顔固い言われとるけどっ。」
「ち、違うよっ。何か、その、少し何か落ち着いた感じになったっていうかちょっと余裕出てきた感じっていうか。」
「そぉ。」
谷地はうんうんと首を縦に振る。
「何かほっとした。」
「そうなん。それやったら良かった。」
言ってさて兄さんに連絡入れんと、と言いながらガジェットケースからスマホを取り出す美沙はパッと見変わらないように見える。しかし谷地から見るとその雰囲気も今までと何か違っていて、どこか満たされているように見えた。
次章に続く