第42章 【弁慶の七つ道具】
その日の放課後、男子排球部の部室にてこんな会話がなされていた。
「縁下さん、べんけいのななつどうぐってなんですか。」
「急にどうしたんだ、日向。」
力に聞き返されて日向は昼休みにあったことを話した。
「こらこらまたやったのか、しかも今度は影山まで。」
「うっ、スンマセン。」
苦笑する力に影山の顔色が悪くなる。力は仕方ないなぁと笑い、説明してやる。
「んんっ。」
説明を聞いた日向が声を上げた。
「美沙の奴、7つどころか10個かそこらくらい持ってたけど。」
「多分美沙のおばあさんはたくさん道具持ってることを例えて洒落てみたんだろうね。」
「お、奥が深いっす。」
「さっすが縁下さんっ。」
「いやあの、お前らはもっと色々覚えような。あと、度々ボタン取れるようなことしないように。」
「ウッス。」
日向と影山は同時に返事をする。
「ふーん。」
ここで後からやってきた月島が口を挟んだ。
「5組で谷地さんとあいつがお針子さん状態だったって噂になってたけど原因君らなんだ。高校生にもなってボタン取れる勢いで引っつかんだりする、普通。ホンットガキだよね。」
「何だと月島、てめえ。」
「つ、ツッキー、美沙さんの名前呼んだげなよ、縁下さんに失礼だよ。」
「おはりこって何。」
「雇われて服縫ったりする人のことだよ、日向。」
「おおー。」
「ちょっと、ホント君らどうやって入試通ったの。」
「なんだよ月島、馬鹿にしてんのかっ。」
「純粋に疑問に思っただけだけど。」
「俺と日向を一緒にすんなっ。」
「おい影山っ、どーゆー意味だっ。」
「え、縁下さん、何かまずい事になりそうですっ。」
山口が慌て、力は大丈夫だよと笑ってみせてから3人の間にすっと割って入った。
「はいはい、そこまで。早く着替えないと大地さんに怒られるぞ。」
力に言われて流石の3人も静かになる。
「あ、そーいえば。」
日向が思い出したように言った。
「美沙にホタテるなって言われたんだっけ。」
「何で貝類なの。」
山口が突っ込むが力はすぐに察した。
「ああ、ほたえるなって言われたんだな。」
「あ、それ、それですっ。」
「えと。」
首をかしげる山口に珍しく覚えていた影山が答える。
「暴れんなってことらしい。」
「へぇ。」