第6章 【関西弁使用許可2年編】
「そろそろかな。」
力が呟くと廊下の方からバタバタと足音が聞こえ、開けっ放しのドアから見慣れた顔が現れた。
「ごめん、兄さん遅なった。って、あ。」
何も考えずに関西弁で言った美沙は田中以下男子排球部の2年生4人がいることに気がつき手で口元を覆う。
「失礼しました。」
「ごめんよ美沙、急に呼びつけて。」
「いや、えと、」
使用言語の切り替えにもたつき美沙はパニック気味だ。
「ちょっと木下の見てやって。動画が再生出来ないんだって。」
美沙はまだパニック気味のままだ。埒があかないので力は言ってやる。
「もう気にしないで喋っちゃいな。」
美沙は頷き、木下のスマホを見せてもらう。
「これ動画情報は。あー、動画IDこれか、スマホはあかんタイプの形式やわ。」
「そーなのかっ。」
「はい、特定のソフトで作った奴でたまにありますよ。大抵スマホは再生できへんです。非公式アプリで一部なら再生出来る奴あるけど有料やし保証がないのは一緒やから無理におすすめはでけへんってとこです。」
スラスラペラペラ詳細を関西弁で告げられた木下はヒクヒクしていた。
「兄さん、やっぱりまずかったんかな。」
「大丈夫だよ。」
実際木下はやや圧倒されただけで気を悪くしたわけではなかった。
「流石縁下妹、動画情報だけでそこまでわかるか。そっかあ、無理しねー方がいいんだな、ありがとう。」
美沙は大変嬉しそうにする。