第40章 【出来心とその顛末】
もちろん美沙はその後、夕飯を済ませた力に早速抱っこされていた。
「俺には縁がないと思ってたんだけどな。」
美沙を抱きしめたまま力が言った。
「何が。」
珍しく自ら腕を伸ばし力に抱きついて美沙は尋ねる。
「萌えシチュエーション的な奴。」
「え、萌えシチュなんかあったっけ。」
「お前ホントそういうとこはボケてるな。帰ったら妹が自分のベッドに潜ってましたなんてそれだろ。」
美沙はせやろか、と呟きしかし力の温もりや鼓動に包まれて満たされた気持ちになって義兄の肩に顔をスリスリグリグリした。
「兄さん、大好きー。」
また語尾が伸びている。完全に美沙は甘えたモードだ。あるいはツンツンがデレたと言うべきか。
「俺もだよ、美沙。」
力は言って義妹の頭を撫でた。
両親がいなかった為、美沙は長い事力の部屋に滞在し今まで一番力に甘えた。力も体勢を変えては抱っこして、離す気がないようだった。やがて何を思ったのか力は義妹をくすぐってきた。美沙はピクっとしてして身をよじる。
「に、兄さん、あかん、めっちゃ、くすぐったいっ。」
「へえ、くすぐったがりだったのか。」
力は言って更にくすぐってくる。美沙はたまらず目に涙をためてまで笑い出し、それを見て力は呟いた。
「これは使えるな。」
「な、なにに。」
「内緒。」
「ず、ずっこい、私、には、隠したら、あか、ん、言う、くせにっ。」
しかし力にくすぐられ続け、結局美沙はごまかされてしまう。流石にされっぱなしは悔しかったので他からヒョロヒョロ呼ばわりされている手を伸ばし、細っこい指先でそおっと力の首筋を撫ぜてやった。
「あっ。」
力が一瞬ビクッとし、美沙はドヤ顔をする。
「こいつ。」
力は言いながらも笑い、再び義妹を抱き上げる。
そうやって兄妹はしばらくの間、触れ合っていた。いいのか悪いのかはともかくそうしたかったから2人はそうした。美沙はああ、幸せやな、私としみじみ思っていた。
余談だが次の日の男子排球部の朝練にて力は大変機嫌よくしていた為またも木下と成田に指摘されおちょくられることとなる。
次章に続く