第41章 【青葉城西と遭遇】
縁下美沙はまた妙な事になっていた。どうも及川徹と関わって以降こういうことが多い。それはこうやって始まった。
下校後美沙は本屋へ寄り道をした。今日も図書室に残らない日で、しかし寄り道したが故に本来より少し遅い時間に外を歩いていた。帰る途中で他校の野郎共の集団に出くわしたがそんなことはどこでもあるため気にしない。しかし
「あ、嫁。」
野郎共の集団の誰かが訳のわからない事を言っているのが聞こえた。
「国見、嫁って。」
「あ、わかった。松川、あれだきっと。」
やかましい野郎共である。美沙は自分の事とは思わずそのまま歩き出す。ところが次の瞬間、聞き捨てならない事が耳に入ったのだ。
「おーい、そこの女子ー、烏野6番の妹ー。」
美沙は内心ギクリとした。知らない声、しかし向こうの台詞は明らかに自分を烏野高校男子排球部背番号6番の妹と知った上である。そして自分を知っている他校のバレー部と言えば一つしかない。嫌な予感しかしなかった為美沙は聞こえなかった振りをして更に歩き出すが相手は思わぬ手に出た。ドドドっと足音がしたかと思えば
「おーい、無視すんなよー。」
目の前に回り込まれてしまった。制服を見てやっぱり青葉城西かと美沙は思う。回り込んできたのは花巻だが美沙は誰だかもちろん知らない。
「確かに烏野6番の妹だな、写真とあんまかわんねー。」
花巻が言い、退路を断たれた美沙はぎこちなく顔を上げ、更にそおっと後ろを振り向いた。瞬間、そこにいた野郎どもの大半がおおーと声を上げた。
美沙は困惑した。仕方あるまい、ただでさえ人見知りがひどい女子1人、身長170センチ以上が大半の野郎共を前にしているのだから。
「あの、察するに青葉城西の男バレの方々だと思いますが、えと、何で私の顔が割れてるかについて。」
目を合わさず早口で美沙は尋ねる。
「お前の兄貴がこないだ影山と一緒にうち来たから。」
答えたのはやはり花巻である。