第38章 【勉強会】
「天然の勝利だな。」
「他でも言われるけど天然言うんはもっとふわふわの癒し系キャラちゃうの。」
「お前だけはそう思っときな。」
「何やろ、うすーく腹立つ。」
「いいから。お前は数学の問題何とかしな。」
美沙はうぐぐと唸り、どうしよう図形の問題ようわからんと頭を悩ませた。
しばらくしてからである。
「げっ、龍がまた勉強してるっ。」
若い女性の声だ。野郎共は一斉にふすまの方に振り向き、美沙もやや遅れて振り向くと顔立ちと雰囲気が田中によく似た大人の女性である。
「ねーちゃん、またとか言うなっ。」
田中が声を上げ美沙はここでああこの方が噂の田中先輩のお姉さんかと思う。
「姐さんっ。」
「お邪魔してます。」
西谷と義兄がいい、成田と木下もどーもと言う。美沙はいつもの人見知りが発動、目を合わせられずとりあえず会釈(えしゃく)する。
「おお、夕に力。あ、お前ら2人も。と、んっ。」
田中の姉は早速力の隣で縮こまっていた美沙に目を止める。
「何何、女子がいるっ。力の彼女か。」
「ちちち違いますよっ。」
義兄が慌て、後ろで残りの野郎共がぶっと吹くのが聞こえる。美沙はこれあかんやつやどないしょうと思い声が出ない。
「ちげーよねーちゃん、こいつあれだ、縁下妹。」
田中の姉はおおー、と感嘆の声をあげずずいと美沙に顔を近づけた。力がオロオロするがもう遅い、美沙は顔を真っ赤っかにしパニック寸前だった。
「そうか、力に妹が出来たってあんたかぁ。」
「は、初めまして、縁下美沙です。兄がお世話になってます。」
逃げられないことを悟り美沙はどうにか挨拶した。
「アッハッハ、真面目だなー、力そっくりじゃん。本当に義理の妹。龍の姉の冴子でぇっす、ヨロシクっ。」
「よ、ヨロシク。」
美沙はタジタジしながら返す。
「色々聞いてるよー、力が可愛がってすっかり入れ込んでるって。」
力が声なき叫びを上げ、美沙は田中をジロリと見る。