第38章 【勉強会】
「ちょお田中先輩、どーゆーことなん。」
田中はそっぽを向いて口笛を吹く。
「ごまかしなーっ(ごまかすな)。あることないことペラペラ喋ったやろっ。」
「知りマセン。」
「何が知りませんやーっ、どー考えても面白がって何でもかんでも喋ってるやろーっ。」
美沙は田中のシャツの襟首を掴みぐいぐい引っ張る。残念ながら揺さぶることは出来なかったが美沙はしばらくわあわあと田中に文句を並べまくった。
さて、美沙はわあわあ言う事に忙しくて気づいていなかったが突如弟相手に関西弁で何やら言い出した美沙を見て冴子が腹を抱えて笑いだしていた。
「ちょっ、力っ、あんたの妹あれ何っ。」
「すすすすすみませんすみませんっ。」
「いや謝んなくていいから、超面白いじゃん、さっきまであんなにプルプルして静かだったのにどうしたっ。」
「ひどい人見知りでして。どっちか言うとあっちが素です。」
力は呟く。
「あはははは、そっかそっか、ギャップ凄すぎてびっくりしたわ。龍が関西弁っつってたけど、なるほどあれねー。」
「大丈夫ですかね。」
力は関西弁について念のため尋ねる、聞くまでもない気もしたのたが。
「オッケーオッケー、どんとこいっ。」
さすが冴子さんだと力は思う。
「しかし大人しい顔してやるね、龍相手にあんだけぐいぐい突っ込むか。」
「ああ、でもそろそろ止めないと勉強が進まない。」
力は言って美沙に声をかけた。
「美沙、その辺にしな。」
しかし美沙は田中と言い合うのによほど一生懸命なのか、珍しく兄の声が聞こえていない。しまいめに田中のこめかみあたりをぐりぐりしようとし当の田中には腕を掴まれ阻止されている。
「聞こえてないっぽい。」
冴子に言われ力はそうですねと、返す。
「どうすんの。見てる分には面白いけど。」
「大丈夫ですよ、聞こえたら一発で止まりますから。」
力は言って美沙に歩み寄り、華奢な片方の肩を掴む。
「やめなさい。」
静かに言うと美沙は止まった。渋々といった顔で力の方を振り向く。