第38章 【勉強会】
「そのうち抱っこしだすんじゃね。」
木下がからかい笑いをするが美沙は戦慄した。実際力が家で頻繁にやるのだから冗談ごとではない。チラリと義兄を見るが流石にそのような暴挙に出る様子はないようだ。
とりあえず引き続き頭をポムポムしたり撫でたりする義兄がやりにくそうなので美沙は自分もちゃぶ台に突っ伏した。
「成田あれ何だ、動物か。」
「眺めてようか、面白そうだし。」
好き勝手言いながらおちょくる木下と成田を義兄の力が上目でジロリと見る。
「黙って聞いてりゃお前らね。」
「私らはどこぞのパンダかっ。」
「兄妹で連携プレイまでしだした。」
「式には呼んでくれよ。」
「文脈丸無視かいっ。」
普段常識的な先輩の無茶苦茶な発言に美沙は思わず声を上げたが成田はにっこり笑う。この人ごまかしはったと美沙は思った。義兄の友人なだけある。ここで気が済んだのか力がさて、と呟き美沙を撫でるのをやめた。
「休憩終わり。ほら田中、西谷、いつまでも死んでる場合じゃないぞ。」
返事の代わりにうううとうなり声がする。どっかのゲームのモンスターみたいだと美沙は思う。そしていつもはうるさい屍共はなかなか起きなかった。木下と成田も物理的に揺さぶったり引っ張ったりするが効果がない。何の気なしに美沙は呟いた。
「あのー、はたして清水先輩がそんなんで喜びはるんかどうか。」
瞬間、屍共がガバッと起き上がり美沙はもちろん義兄、木下、成田もびっくりした。
「龍っ。」
「ノヤっさん、こうしちゃいられねーぜっ。」
「おうよっ、潔子さんにみっともねえとこみせらんねぇっ。」
「つーわけで縁下先生、お願いしますっ。」
力がう、あぁと明らかに動揺した妙な返事をし、美沙を横目でチラリと見る。
「えーと、まあやる気になったんなら何でもいいよ。とりあえずその問題集の続きな。」
「ラジャッ。」
屍だった野郎どもは元気よく返事をし鉛筆またはシャーペンを動かし始めた。
「美沙、やっぱお前連れてきて良かったよ。」
義兄が呟く。
「へ。」
言われて美沙は力を見た。力はにっこり笑って言った。