第37章 【こだわり】
「うって何だ。」
ドアを開けると義兄の力がいた。
「いやびっくりして。」
「それも本当なんだろうけど、何か珍しく電話で長いこと喋ってたね。」
「そら私かてたまには。」
美沙は言って台所へ降りようとした。
「及川さんかな。」
ギクリとした。
「聞いてたんやないの。」
「いや、谷地さんとか日向あたりなら普通に答えるだろ、お前。」
「何という。」
本当に義兄の察しの良さにはかなわない。
「動画のお礼来た。」
「そっか。」
美沙は落ち着かなくなって思わず聞いた。
「兄さん、何を心配してるん。」
今度は力がギクリとした様子を見せた。
「大丈夫やって。」
美沙は笑って言った。
「私はまだここにおるよ。」
言った瞬間に義兄に抱っこされた。ここは部屋の外だ、義父母に見られたら何と言い訳するつもりなのか、美沙は内心慌てる。
「今更だけどお前、いい子だけどホント変わってるな。こんだけ俺が縛り付けてるのに嫌じゃないのかい。」
「好かん人の言う事聞けるほど私は人間出来てへん。それにあまりにあれやったらいくら何でも言う。」
美沙は正直に答えた。力はそうだったな、良かったと安心したように呟いた。
幸い義父母にこの状況は見つからず、美沙は台所へ行って水分補給をした。
次章に続く