第37章 【こだわり】
「どうしたの。」
「親に呼ばれた気がしたけど気のせいでした。」
「おにーちゃんじゃなく。」
「ちゃ、ちゃいますっ。」
「美沙ちゃんにしては健闘してるけどバレバレだよ、ホント嘘つくの下手だねー。」
「そんなん言うたかて。」
おちょくられて美沙は困ってしまう。
「いーんじゃない、おにーちゃんもそこが気に入ってるんだろうし。」
「貴方は。」
美沙は何の気なしに聞いたが及川があはははとどこか自嘲するように笑ったのでどきりとした。
「それ聞くの、俺に。」
「別に他意は」
「ないのわかってるけどさ、このど天然。」
「なんやろ、えらい言われような気がする。」
「いいんだよ、美沙ちゃんはそれで。」
何だか美沙が理解できないままに及川は話を終わらせた。
「とりあえずさ、オタクの子にもこだわりがあるんだなってわかった。」
「あ、はぁ。」
「面白い話聞けてよかったよ、じゃあね、バイバイ。」
「ありがとうございます、失礼します。」
通話は及川の方から切られ、美沙はスマホのホームボタンを押してアプリを引っ込める。ついでに全体の処理が遅くなっている気がしてタスクキラーアプリを起動、裏で動いているアプリのうち止めても構わないものを一括でぶった切った。珍しく長く通話した上に相手が相手だったので緊張もしたのか喉が乾く。
水飲みたいと思い部屋を出ようとした時だ。
「うっ。」
思わず唸ってしまった。