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【ハイキュー】エンノシタイモウト

第37章 【こだわり】


「私がこんなん見たいなーって思う奴を誰も作らへんから。ほな自分で作るしかないって思て。」

通話している向こうで及川が目を見開いたことを美沙は知らない。

「うん、じゃあさ、自分で絵を描いて作ってるよね、嫌にならない。手間かけてる割にあんま見てる人がいなかったらさ。」
「なりますよ、そら。描かへんかった時期もあります。せやけど結局描くのやめられへんかった。あの、うまく伝わらへんかもしれんけど描いたりするのってちょっとずつ自分の世界が出来上がっていく感じがめっちゃ楽しいんです。ほんでそれを動画にしたら多少なりとも動くやないですか、更に新しく世界が出来ていく訳でしかも思う演出が出来たらもうテンション上がって、あの瞬間を知ってもたらもうやめられへんくて、そこへ上げて1人でも見てくれたら最高やないですか。」

美沙は夢中で語った。義兄以外の人にここまで語った事はない。

「及川さんやうちの兄さんがやってはるんはスポーツで、分野は全然ちゃうけど、せやけどきっとこの辺が楽しいからやっぱりやめられへんってあるんちゃいます。うちの兄さんはレギュラーちゃうけど今もバレーボール投げ出してへんし及川さんかて。」

当然美沙にはわからないがここで及川はバレーボールの試合で何かを得てぞくりとした時のような笑みを浮かべていた。もし美沙が見たらやや怯えたかもしれない。

「いや、その、吹奏楽とかやってる人ならともかくただの下手絵描くオタから言われてもアレかもしれへんですけど。」
「関係ないよ、それにそこまで熱い美沙ちゃん新鮮。」

ここで及川はああ、と呟く。

「嬉しいな、俺もっと頑張れる気がする。んでやっぱり縁下君ずるい。」
「何で。」
「そういう事を当たり前に言って自分の為につくしてくれる子がいつも側にいるんだもん。」
「何度も言うけど私は別に。」
「今度おにーちゃんに聞いてごらん。きっと美沙ちゃんはすっごくいい妹だって言うと思うよ。」

流石にそれは聞き辛いと美沙は思う。きっかけは何なのかすぐ気づいた上でにっこり笑って圧力を放つ義兄は美沙にとって洒落にならない。今だって及川と音声通話していると知れたらどうなるやら、美沙は思わず部屋のドアの方を振り返った。今はまだ大丈夫なようだ。
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