第36章 【義兄の突撃】
てんやわんやになってからの帰りのことだ。
「お前にも向こうにも悪いことしたな、まさか自分が悪目立ちするって思わなかった。」
歩きながら力は呟いた。
「縁下さん、妹絡むと何かキャラ変わるようになりましたね。前から思ってたスけど。」
影山に言われて力は違いないと苦笑する。
「最近成田達にも言われるけど入れ込んじゃったからなぁ。」
「いい奴とは思います、ぱっと見はとっつきにくいけど喋ったら全然。だけどなんで。」
「俺があいつに甘えてるだけだよ。」
力は自嘲気味に呟いた。
「あいつは来た時から俺を好いてくれて、俺の言うことも大方聞いて、俺から離れないってわかってるから。」
「離れないって」
少しためらったように影山が言った。
「そんなのわかんないじゃないすか。」
「美沙は離れないよ、いなくなるなっていつも言ってて、そんであいつは言う事を聞くから。だけど、そうだな、万一あいつが自分から離れるならそれは俺が余程のことをした時かな。」
力は遠い目をして答えた。影山は真面目な顔をしてそんな力を見つめていた。