第36章 【義兄の突撃】
「さっすが美沙ちゃんのおにーちゃん。」
「それを貴方に言われたかないです。」
「縁下さんっ、目こええっすっ。」
影山に言われて力は気を取り直した。
「何にせよ今日はこそっと拝見しますね。」
「どーぞ。」
食えないもの同士が微笑み合っている様子ははたから見ると怖いかもしれない。少なくとも後で影山が仲間に語ったところではかなり怖かったらしい。
さて、こちらは岩泉以下、青葉城西チームの連中である。
「あのシスコン野郎、とうとう突撃してきやがった。」
岩泉が引きつった顔で言った。
「シスコンって影山ですか、まさか。」
「ちげーよ、金田一。あの付き添いで来てる風の奴。烏野の6番。」
「あー、練習試合にいたような。」
1年の金田一はうーんと考え込み、更に他が首を突っ込む。
「あの地味メンか。妹いたのか。」
3年の花巻がいい、
「及川にいろいろ言ってるみたいだけどあれ何。」
同じく3年の松川までが気にしだす。
「クソ川があいつの妹にちょっかいかけっからだ、ったくメンドクセー。」
「美人か。」
花巻に聞かれ岩泉は首を横に振る。
「オタクで動画投稿者。」
「マジか、及川気が狂ったのか。」
「知らねーよ、とりあえずここんとこ何かにつけて縁下君ずるいってうるせえ。」
「誰って。」
「だからあの6番。」
ここで松川がまた口を挟む。
「そんなに妹にべったりなの。」
「話聞いてる限り。」
「マジで。人って見かけによらないな。」
「正直どうでもいいです。」
1年の国見が切り捨てる。岩泉はああ、と呟きしかし思わず余計な事を口にしてしまう。
「つか妹も妹だ、いきなり出来た兄貴によくあんだけ」
しまった、と気づいた時にはもう遅い。