第32章 【劣化版】
物理的にダメージを与えられ及川に相談し義兄の前では甘え、しかし疲れてヘロヘロになりながらも縁下美沙は次の日登校した。
こんな程度で負けてはいられない、大体登校拒否ったからってどうにもなるものか。きつい性格ではないものの美沙はそう考えるタチだ。
登校し1-5の教室に入るとクラスの連中の中にヒソヒソ言っているのがいる。縁下来た、マジかといった感じだ。薬丸だった頃にもちょくちょくあった事だからそれはスルーして先に来ていた谷地に挨拶する。
「おはよー、谷地さん。」
「おはよう。良かった、美沙さん来て。」
「朝から君は何を。」
「あ、ごめん。何か昨日大変そうだったから。」
「ありがとう、大丈夫やで。だってサボったってしゃあないやん、阿呆らしい。」
谷地はさすがだねぇと呟き
「縁下さんも心配してたよ。」
兄さんもなぁと美沙は苦笑した。
「私の事まで気にしてたら身ぃもたんのに。あの人こそもっと自分の幸せを追ってもらわんと。」
「いやでも多分」
谷地がモゴモゴと言ってから美沙の耳元でこそっと続けた。
「今の縁下さんは美沙さんの世話焼くのが幸せなんだと思うけど。」
席に座っていた美沙は椅子から転げそうになった。が、すぐ復帰した。
「それで思い出した、週の大半を図書室に留め置かれる羽目になった。」
谷地がゲーンっとなった。
「そこまでするのっ。」
「いや、あの」
美沙も顔を赤くして言った。流石に恥ずかしい。
「なんぼ言うても兄さんが納得せえへんから。」
谷地はなるほどと苦笑した。