第30章 【及川の助言】
さて、その階段から落とされた美沙は学校内では強がっていたものの帰り道をトボトボノロノロと歩いていた。が、そこでまた妙な状況になってしまった。原因はやはり青城の例の奴である。
「あっ、美沙ちゃん見っけ。」
美沙は後ろから声をかけられた。声の主はわかっていたが今の姿を見られるのが嫌で後ろを振り返らず足を早めたのだが
「ちょっとっ、逃げるなんてひどいっ。」
無論逃げられらはずもなくおまけに
「ちょっ、あかんあかんやめてっ。」
義兄以外の人にそれも外で後ろから抱っこされた。
「てめえこの馬鹿っ、路上で何セクハラ行為してんだボケがあああああっ。」
「痛いよ岩ちゃんッ、何も殴んなくてもっ。」
「そーでもしなきゃ収拾つかねえわっ、おらっ、離してやれっ。」
ちぇーっ、と後ろから心底つまらなさそうな呟きが聞こえ、解放された美沙は後ろを振り返る。
「こんにちは、及川さん、岩泉さん。」
自分でもわかるくらい元気なく挨拶をした。
「そんな嫌そうな顔しないでよー、どうせオンラインでたまに喋ってる訳だし。」
「アホかてめーは、路上でいきなりセクハラ行為されたらそら引くわ。」
美沙はいやまぁ、と曖昧な言葉を発する。岩泉はそんな美沙の姿を見てあ、という顔をし、及川は察したように言った。
「オフラインじゃ久しぶりだし、ちょっとお話ししてこーか。」
今回については美沙は自ら承諾した。
及川、岩泉と一緒に来たのは以前アイスを食した公園である。
「で、早速だけどおでこの絆創膏と膝のガーゼと肘の湿布どうしたの。」
及川に聞かれて美沙は事情を話した。
「穏やかじゃねえな。」
誰かに階段から落とされたと聞いて岩泉が呟く。
「心当たりはあるの。」
美沙は首を横に振る。
「ただまぁ立場上嫌がらせ受けやすいとこはあります。時期外れの編入生でホンマの親がおらんくて養い子になってそれも今おる2年の義理の妹て人によったら格好の材料やろし。」
「ったく高校生のやることかよ。」
「私も頭悪いやっちゃなって思うけど。」
「あとはこれかなー。」
及川が言った。
「ブレスレット増えてる。」
クスリと笑う及川に目ざとい人やな、相変わらずと美沙は思うがそれについて何か言う余裕がない。