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【ハイキュー】エンノシタイモウト

第29章 【落下】


1年5組にて谷地は美沙が戻って来ず授業が始まって英語の先生に縁下はどうしたと聞かれても答えられないところへ入室許可証を握り締めた縁下美沙が入ってきたので大変驚いた。
おまけに肘や膝に湿布やガーゼ、額に絆創膏という異様な様子が谷地だけでなくクラス全体をざわめかせる。誰かがまた縁下かと言った。それだけでは済まず、英語の先生にどうしたのか聞かれた美沙は妙によく通る声で言った。

「他所のフロアのお手洗い行って戻ろうとしたら誰かに階段から落とされたんで保健室行ってました。」

英語の先生は絶句、当然クラスは騒然としたが当の縁下美沙はいつもなら人見知りで下に落としがちな視線を上げて真っ直ぐ前を見ており、そんなもん知るかと言いたげに堂々と席に戻った。

当然この話はその日の放課後、美沙の義兄、力の耳に入ることとなる。

「谷地さん、何か5組賑やかだったけど何があったの。」

発端は部活にて山口が谷地に尋ねたことだ。

「あ、いやその」

力に気を遣ったか谷地は言い淀むが月島が鋭く切り込む。

「どうせまたあいつでしょ。変な時間に廊下歩いてるの窓から見えた。何か怪我してたっぽいけど。」

ここで聞き逃す縁下力ではなかった。

「ちょっとごめん、うちの美沙が怪我って。何があったの。」

谷地がうっと唸りしかし力の真剣な視線に応えるかのように事を話した。聞いた瞬間力は顔面蒼白になりドリンクのボトルを取り落とした。何事かと2年仲間他部員達が力の方を振り返る。

「あいつどんだけなの、階段から落とされましたなんて堂々と言う、普通。」

絶句する力の代わりに月島がコメントする。

「美沙さんは自分が悪い事したんじゃないし本当の事だから隠しても仕方ないって。」
「う、うん、わかるけど勇気あるなぁ。俺だったらきっとすみませんだけ言ってガマンしちゃうよ。」

山口が動揺しながら言う。力はそれらを聞きながらしかし頭はどうしようどうしようと思っていた。妙な時期に来た訳あり編入生、2年に義兄がいて変わり者で男子排球部関係者以外にはろくに話さない、そんな美沙の立場は一部では有名で故に嫌な目にあう事もある。ただでさえ一度義兄の悪口を言われ反撃し怪我をした義妹だ、出来ればもう悪意による肉体的ダメージを負ってほしくなかったのに。
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