第28章 【アイドル】
「今だから言うけど最初は妹が出来るとか言われてすごく困った。」
「そらしゃあないやん。」
「お前ならそう言うと思ったけど。でも結局一緒に暮らしてだんだんお前の事見えてくるようになって思ったんだ。お前は見た目より強い子で例え寂しくても寂しいってなかなか言わない。痛いって思っても自分の事を後回しにして俺とか他の大事に思ってる奴を優先する。」
美沙はう、うんとしか言えなかった。当人は本能的にやっていたからだ。
「その辺がお前の優しいところでそこが好きなんだけど、もっと自分を大事にしてほしいんだ。」
「えと。」
「そのままだとお前突っ走って壊れそうでさ、だから」
力は辺りに人目がなかったためかそっと美沙の肩を抱き寄せてきた。
「これでもかと甘やかす事にした。」
「なんという。」
美沙は呟いた。
「お前はね、もうちょい自分の価値を認めようか。真面目で一生懸命だしよく言う事聞くし腹括ったら強いし、ついでにスマホのシステム2種類とパソコン使えるなんてお得だよな。」
「うーんと、スマホのシステムて林檎印はそないわからへんよ、ふだんつこてんのロボット印やし。」
「返事。」
「あ、う、わかった。」
そうして兄妹は帰宅した。
美沙は知らなかったが帰る途中力は内心、嘘つきだな俺はと思っていた。本当は義妹の優しさといわゆる女の子とは少し表現が違うけど自分を一途に思ってくれているところに自分が甘えている。自分を決して否定せずについてきてくれる美沙、こいつは余程の事がなければ自分から離れない。離れて欲しくないから過保護と言われようが保護してしまう。
アイドルの好みとはまた別の話だった。
次章に続く