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紅く染まる百合

第5章 捕獲そして


事件の解決、そんな事は私にとってどうでもいい。
先の戦いで無理をしたせいか、ササコが怪我をしたのだ。

クインクス班の使えなさに、怒りが込み上げてきた。
他の捜査官はなんとも思っていないようだが、私は腸が煮えくり返る思いだ。

ササコ自体も「すぐ治りますから」などと言って笑っている。確かに半喰種だから治癒は早いだろう。だがそこが問題なのではないのだ。

多少筋力強化されているとはいえ、見た目は華奢なその体に傷が付いた事自体が許せない。今すぐにでもクインクス班を怒鳴りつけてやりたかった。

しかしその言葉は発せられる事無く飲み込む事となる。ササコは自分の事よりも、他の人が怪我をしていないか確認し始めたのだ。

「……ササコ、今は周りより自分の事を優先すべきでは?」
少しイラついた声で言ってしまった。
「ごめんなさい……」
少し悲しそうな顔をしてササコが謝る。違う、私が見たいのはそんな顔ではないのだ。

「とりあえず、治癒には時間がかかるようだし、私がシャトーまで運んで行きます」
報告類は全部班長に押し付けると、私はササコを抱き上げた。軽い。体格は私とあまり変わらないはずなのに。

クインクス共が何か言っていたが、無視して車の後部座席に乗せると、シャトーへ向かって車を発進させた。
「あっ、六月くんや不知くん……」
「そんな小さな子供じゃないでしょ?自力で戻れるわよ」
心配そうに後方で騒いでいるクインクス班を見ているササコに、冷たく言い放つ。

「あの……怒ってますか、みゆきさん」
おずおずとササコがきいてくる。
「ええ、怒っているわ。いくら治癒するからといって、自らの体を省みない突撃は良くないと思う」

相手の赫子を体で受け止め動きを止める。それがササコのとった行動だ。決して褒められた動きではない。

沈黙のままシャトーへ車が到着する。
「もう歩けますから……」というササコの声を無視して抱き上げると、部屋の中まで連れて行き、ベッドの上へそっと下ろした。
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