第20章 story ポルナレフ
酷い頭痛と共に目が覚めた。吐き気がする、目の前がぐらぐらと揺れているように見える。
…真っ白な天井をどうやら見上げているらしい。目を少しだけ左右に動かしてみると、そこは薄暗い真っ白な部屋のようで、私はそこに寝ている。
手足が金縛りにあったかのように動かない。瞬きや呼吸など、最低限生きていくうえで必要な行為しかいまはできていないみたい。
「……あ、…」
掠れた声が出て、息を吐く。頼りない、少しだけ高い声。そう言えばずっと前にひどい風邪をひいたときもこんな感じだった気がする。
「亜理紗さん!目が覚めてよかった!」
私の名前を呼ぶ声が聞こえると視界にまた白いものが写りこんだ。今度は動いている。
「ここは病院さ、君は運ばれてきたんだよ」
彼は医者だと言った、へぇ…運ばれてきたのか、と目を細めてみる。
あれ、私は何でここにいるんだろう。何故病院にいるんだろう。掠れているのは声だけじゃなく、記憶もかすれているらしい。
「せん、せ」
「無理して喋らなくてもいい!」
私の状態を医者は丁寧に教えてくれた。
頭を酷く打ったせいで脳震盪を起こして病院に運ばれてきたのだという。剥離骨折をところどころ起こしていて、内臓が少し傷ついているらしい。その脳震盪のせいで今記憶が多少飛んでいてもおかしいことではないと微笑んだ。
「かんがえるのは後にしよう、君のことを心配して病院に駆け付けた人がいるんだが通してもいいかな?」
「…ハイ」
待っていてねと言って医者は出て行った。
私を心配して?母だろうか、父だろうか。もしかしたら年の近い兄かもしれない。はたまたおじいちゃんやおばあちゃんだったりして。
自然と浮かんでくる家族の顔がなんだか嬉しくて、少しだけ口元が緩んだ。