第18章 小さな幸せ 空条
最近…俺の後ろに何者かの気配を感じる。
エジプトから帰ってきて平穏な日々を暮らせると思っていたところだった、だから自然とその気配は新たな刺客だと思い込んだ。
だがなんだかおかしい、俺に何か危害を加えるでもなくただ一定の距離を保ってついて来るだけ。俺が家に帰ればその気配はなくなるし、朝の登校中なんかは全く感じられない。ただ決まって帰り道、後ろからひっそりと近付いて来る。
「…誰だ」
たまらず振り向き姿を確認しようとする。…いない?確かに今も進行中で気配は感じる。
だったらとまた再び歩き出す。今度は確実に気配をとらえた。本当はもう使う予定はなかったんだが、取り敢えずスタープラチナの時止めと使う。
あたりが静まり、時が止まったことを認識してから振り返ると、そこには俺の学校の制服を着た女子学生がいた。大人しそうな女で、いつも俺に付きまとってくるあのウットーしい女共の中にはいないということだけがわかったことだった。
…時間切れだ、その女が動き出す前にもとの場所に戻ってもよかったが、めんどくせーことはもうしたくねえ、目的を聞いてやろうと目の前で時が動き出すのを待った。
「……ッ?!!」
突然俺が目の前に移動したかのように感じたのだろう、女はおっとりしていた目を勢い良く見開いてしりもちをつきやがった。
「…お前、ここんとこずっと俺をつけてるみてーだが、何が目的だ」
こんな質問でスタンド使いがさっさと目的を言うとは思わなかったが、これに少しは動揺しているところを見ると俺の能力を知らなかった感じだな。演技で転んだとは思えんほどびっくりしている様子だ。
「あ、わ、わたし、私は…わ、わたッ」
「…ハァ」
顔を真っ赤にさせて視線を左右に動かして、黙り込んだ。一体、俺に何をしようとつけてきたのか…わからん。
その日はそのまま女が喋れなくなったので俺は立たせてから放って置くことにした。言えまで気配がなかったのはあのまま固まっていた証拠なんだろう。