第15章 アンチビート 空条 ★
オフビートのようにまどろっこしいのは好きじゃないの。あなたの心に刻み込むようにオンビートで淡々と。
あなたが苦しいともがいても止まらない制御不能のビートであなたの心を抉り続ける。
「もう死んでしまいたいの」
楽になりたくてその言葉をまた並べる私。
傷だらけのあなたを癒す間もなく深く傷を作り続ける私。
でも痛いのはあなただけじゃないの。
ねえ、承太郎、私はあなたから逃げられないわ。
「…きれいだ」
私が偽りの笑みを見せた時、あなたは嬉しそうに微笑んだ。その時の私の心臓は酷く暴れまわって、鼓動が早くなる。
「どうした」
私があなたに一方的に刃をとったことなんてなかったのを知っているわよね。あなたに隙なんて一つもなかった、あなたが傷つけろと言わんばかりに私に近付いて来る時にしか私はあなたを傷付けることはできなかった。
「今度は」
ほら、そうやってあなたが孤独な私に手を伸ばすものだから
「どうやって傷を付けるんだ」
私だってあなたの手を取りたいはずなのに
「亜理紗」
与えてくれた全てを、感情という名の全てを振りかざしてあなたに手を伸ばす。
また私が承太郎を傷つけてしまうのをあなたは知っている。
「…優しすぎるのよ」
どうしようもなく私の中で混ざり合う。
「亜理紗」
聞きなれたその声で私の名前を呼ぶ。
感情が入り混じって何も考えられなくなってほら、傷付いてしまったでしょう。
ぐちゃぐちゃになった私の感情も、私の表情も、あなたならくみ取ってくれるから。
「好きだ」
やめて、もう私に感情を教えないで。
私は承太郎、あなたが―
END