第12章 夢見ガール シーザー
「ああ、シーザー・A・ツェペリ、俺の名さ」
「うそ、嘘よ、だってあなたは何年も前に」
「傷が癒えていないのに会いに行くのはかっこ悪いだろ?」
死んだ、私はそう伝えられていた。ならば私の目の前にいるこの男性は誰?シーザーなの?ならばあの死んだという事実は嘘?誰が嘘をついていたの?リサリサさんなのかしら、それともジョセフ、いいや、皆嘘をついていたのかもしれない。
「会いたかった、こうして会えてホッとした」
「私、私は…あなたは死んだと、遺品さえ渡してくれなくて」
するとシーザーは困ったように笑った。
「俺以外の殆どの人間は俺が死んだと思っているさ」
シーザーはベンチに座れよと腰かけた。私も隣に座る。
正直信じられなくて手が震えている。こうして言葉を交わした今も偽物なんじゃあないかとか、幻覚かもしれないとか疑っているけれど、手を握ると確実にそこには体温が存在していた。
「JOJOやリサリサ先生には俺が生きていることを報せていないし、知っているのは俺を助けてくれたSPW財団だけさ」
「SPW財団…?」
「大きい医者みたいなものだ」
シーザーは瓦礫の下敷きになったらしく、もう心臓も動いておらず骨も複雑骨折で死亡しているという判断の上で回収されたのだという。だがそのSPW財団の医師がまだ研究途中だった蘇生術を、波紋を使って行ったのだとか。
奇跡的にも複雑骨折していた骨は治癒されどうにか繋ぎ止め、止まっていた心臓へ血液が流れるようにと波紋で治療を施したらしい。
最初は死亡したという事で知らせることにし、生き返ったとしても別人として生きる道しかなかったのだという。
だがシーザーはこうして、シーザー・A・ツェペリとして私の前にいる。
「どう、して」
「どうしてもなにも、俺は俺として亜理紗を愛したかったから。それ以外に理由なんてない」
ああ、もうこれ以上の幸せなんて存在しない。再びこの人を愛していいと悟ったとき、私はもう前が見えなくなるほど涙をこぼしてシーザーの胸の中に飛び込んだ。