第12章 夢見ガール シーザー
私がシーザーを送り出したのはもう半年以上も前の話。
告白してきてくれて、お付き合いを始めてから1ヶ月も経たないうちにシーザーはリサリサさんの元へ行ってしまった。なんでも新しい修行生が来て一緒に試練を乗り越えなければならないのだという。
「そんな心配するなよ、俺は大丈夫だ」
シーザーはそう言って私の額にキスを落として行ってしまった。
そうはいっても、と本当に私は心配で心配で気が気でなかった。送り出す時も平常を装っていたけれど心の中では大泣きしてぎゅうぎゅう締め付けられていた。
今、私の目の前にはシーザーがいる。でも、喋ってはくれないシーザー。
「…亜理紗、すまねぇ」
代わりにしゃべってくれているのは新しく来ていたという修行生、ジョセフ・ジョースター。もう修行生ではないけど私の中ではそういう認識でしかない。
「謝らないで、こうなることは知っていたわ」
「…ああ」
そう、知っていた。知っていてシーザーを送り出したのは私。この事実を受け止めなければならないのも私。でも、受け入れられていないのも私。
ジョセフは瀕死の状態で救助され介抱されていたのだ。シーズーQとの婚約をすませていたらしく、今は安定した生活をおくっているのだという。
私のもとにジョセフが来たのは全ての事が片付いて落ち着いたとき。私には『もうシーザーが戻ってこない』という結果だけが入ってきた。それ以上の情報は殆どない。あるのは先ほど言った事実とシーザーは強大な敵に立ち向かい名誉の死を遂げたとの事だけ。死体は回収されたらしいけれど見せることはできないのだとジョセフはいった。多分、かなり損傷が激しいのだと思う。
「もし良かったら俺達とこないか?」
「…ううん、大丈夫」
私は今までシーザー無しでも生きてこれたのだから、今更誰かに頼ろうだなんて思わない。迷惑なんてかけたくない。
それに、もしかしたらジョセフみたいに帰ってくるかもしれないじゃない。
そう考えればジョセフからの誘いは断るしかないの。
写真だけのシーザーを見て溜息をついた。