第6章 それはまるでカゼのように 花京院
「ぶえっくしゅいッ」
今日で何度目かのくしゃみをした。どうやら風邪をひいてしまったらしい。
昨日は特別寒かったわけでもないし、インフルエンザだってそろそろ落ち着いてきた頃。何せ健康だけが取り柄の私だったから悪寒が半端ではない今がものすごく恐ろしい。
だからといって学校は休みたくない。先ほど言ったように私は健康そのものだったから単位なんて余裕だし、頭は悪くても進路は決まりそうだ。だから別に今休んでも大した問題ではないのだけれど、学校を休んでしまうと休み癖が付きそうで、それが嫌だ。
「風邪かい?」
同じクラスの典明は高校からの付き合いで、ゲーム仲間といったところ。それ以上の関係ではない。
「いやぁ…かもしれない、なんか寒いなあ」
「保健室には?」
「まさか」
面倒くさい、というのが本心。あの真っ白い空間が苦手だし、保健室へ行くには階段を何回もおりなければならない。体調が悪い生徒をなんで上から下まで、また上へと往復させるのか全く意味がわからない。
「じゃあ先生に言っておくから早退しなよ」
「無断早退は反省文指導ですよ典明君」
「気持ち悪いな」
「病人に対する態度かそれ?」
久々に君とつけて読んでみれば気持ち悪いと言われるし、病人を何だと思っているんだコイツは。でもいちいち突っ込んでいられるほど今の私は元気じゃあない。仕方なくため息をついて荷物をまとめ始める。
「おくって行こうか?」
「そんな幼稚だと思う?」
「いいや」
私の家はこの学校から一番近いバス停を使って駅まで行き、そこから電車に乗らなければならないルート。登校には一時間半ちょっとかかるからとても面倒くさい。まだこうして行動できる間に帰らないと共働きをしている両親に迷惑をかけてしまうので大人しく帰ることにした。