第5章 私のモノ 空条
「承太郎承太郎!」
幼馴染の承太郎とは高校まで一緒の進路。たまたま一緒だった…なあんて都合の良い話じゃなくて、私がコソコソ隠れて承太郎の進路についていっただけ。
「…おう」
面倒臭そうに私の事を見下ろすけど、私はそれにこりたりしない。それこそ周りの女子と一緒じゃあないかなんて言われてしまったら心が折れる。私はあんなきゃあきゃあうるさい奴らとは違う。一緒にしないでほしい。
「ちゃんと宿題やってきた?」
「亜理紗じゃあねえんだから」
「えらいね!うつさせて!」
「だろうと思ったぜ…」
こんな関係。付き合っているわけではない。私たちの間にはそんな変なものはいらない、そんなことをしなくたって承太郎は私のモノだし、だれにも渡さない。
仮に彼女ができたとしたら、そりゃあ一歩引くかもしれないけれど、幼少期の承太郎は私のモノ。私の記憶は私しか知らないんだから。
「おはよう、承太郎」
目の前に現れたのは私の宿敵…花京院典明。コイツはなんだか知らないけれど、転校生の癖に来た途端長期にわたって休み、帰ってきたら承太郎と仲が良かった。承太郎も一緒にいたらしくてとてもムカつく。その間の承太郎はコイツのモノだったという訳。
「しっし、あっちいってよ」
「…なんだ、亜理紗もいたのか」
「なにその言い方!早くあっちいって!」
まるで私の事は視界の隅にさえ入っていませんでしたみたいな言い方をする。…許せない。なんだか妙に仲がいいし、周りでは承太郎とコイツがデキてるんじゃないかみたいな噂が広まるくらいに仲がいい。
私の知らない承太郎を知っているなんて…腹が立つ。