第3章 そこから始まるラブストーリー ディオ
「ディオ・ブランドー、あなたは負けたのよ。この亜理紗に負けたの。わかる?」
どうも神経を逆なでするのが得意な女のようだ。一発パンチでもかましてやれば泣いて許しをこい願うか?
「あまり僕を怒らせるなよ」
「別にあなたが怒ったとしても怖くなどないわ」
腕を組み、階段の上にいる僕をまるで見下すような目を向ける。あぁ腹が立つ。僕はこういう目を向けられるのが大嫌いなんだ。
ここがジョースター家の屋敷内でなければ骨が折れるまで殴り飛ばしてやるのに、それができないのがとてつもなくもどかしい。
「…もう二度とエリナに近づかないで」
それだけ言うと呆然としていた執事たちを睨み付けて出て行ってしまった。
呆然としていたのは執事たちだけじゃない、僕もなんだかわけがわからずに足を動かせなかった。恐怖でも支配でもなんでもないこの心の靄を晴らす方法を僕は知らなかった。
「亜理紗…か」
初めてこのディオに楯突いた女。興味が湧いた。あれは将来ずば抜けた美貌を持つ綺麗な女性となるだろう。その女を跪かせたらどんなに勝ち誇った笑みを浮かべられるだろうか。想像するだけで続々とするほど楽しみだ。
ならばこのジョースター家にいる間、あの女を手懐けてやろうではないか。
負けたわけじゃあない、女同士のキスなど回数に入るものか。なんにせよ男とのファーストキスは僕が奪ったのに変わりはない。
「ディオ様」
執事が心配そうに僕に声をかける。気にしないでくれと弱々しく笑ってみせれば頭を下げて持ち場に戻っていく。
そうだ、こうやって支配したい。どんな輩でも僕の下でこうやって頭を下げていればいい。
いつかあの女も支配下に置いてやる。そう時間をとらせるつもりはない。
「……」
今からとても楽しみだ。
END