第3章 そこから始まるラブストーリー ディオ
「ちょっと!!どういう事?!」
屋敷内が騒がしいかと思えば誰かが怒鳴り声を上げて入ってきたらしい。メイドや執事が怒鳴り込んできた人物―声からして女だ―を取り押さえて何やら説得しているようだが、何があったんだ。
「出てきなさいよ!ディオ!ディオ・ブランドー!!」
「早くつまみ出せ!」
「離して!私はディオに話があって…!」
どうやら僕に話があるらしい。声のする方を見ればまだ僕に気が付いていないのか怒りに身を任せて執事たちを薙ぎ払っているのが見える。なんて乱暴なレディーなんだ、はしたないという域を超えて尊敬にも値する。
このまま僕の名前を叫ばせておけば何かしでかしたのではないかと思われて疑われてしまうのではなかろうか。それは大変面倒だ。今何とかしなくては。
「呼んだかい?」
「ッ!!」
その顔は怒りというより憎悪に満ち溢れていていつか聞いた異国のお伽噺だったか、鬼という形相そっくりだった。
「あんたが…ディオなのね」
やけに落ち着いたかと思えば一発二発と執事にパンチを食らわせてその包囲網もどきを脱出してきた。
恰好はそれ程悪くはなさそうな中級階級と言ったところか。執事やメイドたちの振る舞いを見ればこのジョースター家とは何の関係もなさそうな人間らしいが、何故僕の事を知っているのかは不明だった。何しろこの女とは初対面なのだから。
僕は物覚えはいいがどうでもいいことは忘れやすい体質で、人の名前だって一度聞けば必ず覚える。が、興味のない人間の顔はすぐに忘れるのだ。
この女もそうなのかもしれない、とは思うが女にしては珍しいその態度をこの僕が忘れるのだろうか?
こうしてどうにか思い出そうとしている間もその女は僕を見て目をそらさなかった。