第23章 Take a siesta. ポルナレフ
彼女のつくったメシは最高に美味い。なんていったって料理人の父親を持ち、料理評論家の母親を持つ一人娘だからな。メシへの執着っていったら人一倍…いや、五倍十倍だろうな。
「ご馳走様でした」
「はいっ、お粗末様でした」
ふわりと笑って食器を片付けてくれる。きっと何年先も何十年先も俺の為にメシを作ってくれるんだろうなぁ…なんて考えているとキッチンに立つ彼女…亜理紗の後ろ姿が凄く愛おしく思えてくる。いや、前からずっと愛おしいんだがな。
「そうだ、ねえ」
「ん?」
「駅前のフルーツパークあったじゃない、あそこで新しいスイーツが出たらしいの」
見て、といって渡されたのは『新登場!○○を使ったジェラート』と書いてある広告だった。朝ポストの投函されていたらしい。
食べに行こうと言っているようだったが亜理紗はジェラート自体を楽しむために行くのではないと俺はよぉーく知っている。このジェラートが一体どういったものでできているのだとかどんな作り方がされているのだとか、そういったことが気になるから行くのだ。
「この○○ってのが気になっちゃって」
「週末にでも行くか?」
「えぇ?今じゃないの?」
今日は特に用事がない。俺も久々の休暇だったし家でのんびりしたかった。
「んー…わかった、週末ね!」
カレンダーにそうかきこみ、満足そうにうなずいた。
俺達はまだ結婚していない。互いの両親に挨拶したり泊まったり、家族みんなで旅行に行くことだってあった。親公認のお付き合いってのをさせてもらっている。だからこう気兼ねなく亜理紗と一緒に家でのんびりとくつろげる。
つくづく幸せモンだよなぁ…と俺はテレビを消した。