第21章 音 空条
たまに、とてつもない不安感に押しつぶされそうになる。
一体それがどうやって心の中にたまっていくのかわからない。何がきっかけかなんて知らない。
こうしてのんびりと雑誌を読んでいるときや、PCに向かい合っているとき、テレビを見たり音楽を聞いたりしているときになる。
「…じょうたろーくん」
彼は私の方に振り返りもせずにどっかりと座っている。たぶん、手元には最近買ったとかいう海洋なんちゃらとかいう本でもあるんだろう。夢中になると周りの音が聞こえなくなるのは私も一緒だけれど…。
「ねえねえ」
背中を突っついてみても反応がない。死んでる?と声をかけても頷きさえしない。
「…はあ」
まただ、また何かがこころを蝕んでいる。黒いなにかが…わからない。ただ漠然と不安が私にのしかかっている。
「じょうたろうくんよ~」
別に…何かを背負って生きているわけじゃない。
両親とは仲がいいし、祖父母だって元気。友達と喧嘩したわけでもない。勉強だって…まあそこそこだ、頭は良いわけじゃないけど。
「ちょっと、聞いてる?」
それはまるで風のようにひゅうっと私に吹き付ける。そして知らぬ間に去っていく。
私の中に今ある不安はそんな感じ。
周りの音がイヤって程大きく聞こえて、耳をふさいで音を遮断させようとすると、今度は自分の鼓動の音が気になって仕方がない。
涙がぐんぐん溢れてきて、嗚咽なんてものは可愛らしく出さない。ただ黙ってその不安感が過ぎ去るのを待つだけ。