第2章 Sweet's Beast
「ちょ、ちょっと待って!!」
「ヤダ」
「そんな子供みたいな……!!」
「『待て』って言われて待つ訳ないデショ、犬じゃないんだし。大体僕はただお礼をしようとしてるだけだよ?」
「え、お礼?」
「そ。美味しいチョコ作ってくれたお礼」
私の抵抗も虚しく、ボタンを外す手は少しずつ下がっていく。
「お礼ならホワイトデーにすれば…!」
「勿論するよ? でも一ヶ月なんて待ってられないから、ここで返すよ」
一番下までボタンを外され、はだけた服の間から、ひんやりとした空気が入り込む。
ビクッと肩を震わせた私を見て蛍君はニヤリと笑い、耳元に顔を寄せ囁く。
「……はどんな味がするの? チョコよりも甘いのかな?」
2月14日、バレンタイン。
甘い甘い時間はまだ始まったばかり。
【Fin】