第2章 Sweet's Beast
2月14日――
それは勝負の日と言えるだろう。
お菓子業者の戦略に乗せられた女の子達は、揃ってチョコを買い、想いを乗せる。
甘くて苦い一日だ。
そんな日の午後、私は世間の女の子と同じようにチョコを作り、愛しい彼の到着を待っていた。
全ての準備を整えると、タイミングよくインターホンがなる。
「はーい!!」
玄関のドアを開けると、相変わらずの仏頂面の彼――月島蛍が姿を現した。
「いらっしゃい、蛍君! どうぞ上がって!」
「……お邪魔します」
蛍君と付き合って約半年。部活の忙しい蛍君とはあまりデートは出来ず、出来たとしても外に遊びに行くので、家に呼んだのは初めて。
初めてのバレンタインは二人きりで過ごしたかったのに加え、今日は土曜日。部活もお休みだったので、蛍君をゆっくりさせたかったのだ。