第8章 演練
堀川君は出ていく時に、ウチが食べ終えたお皿をお盆ごと持って行ってくれた。
部屋にはウチと加州だけになった。
「あのさ、決めたんだけど。」
何を?急に、よく分かんない事を言われて、眉間に少し皺を寄せて加州を見た。ウチのその顔がムカついたのか、加州はウチ以上に眉間の皺を深くしていた。
「今まで、学び舎には小夜や他の短刀達が同行してたでしょ。明日から俺が同行する。」
「は?どうして?」
このまま、小夜や皆が同行するで良いじゃん。意味が解らないくて、加州に少し近づいた。
「俺以外に大きい刀剣が来たから。今日来たばっかで、まだ体を上手く使えないかもしれないけど、アイツ等なら直ぐに慣れると思う。」
「確かに、短刀達だけにならずに済むようになったけど、」
「短刀達が弱いからって事じゃない。一緒に戦っているから、強いのは分かる。…前々から脇差以上で誰か来たら、そうしようって。」
真剣な顔でウチを見返してくる。それに釣られて、こっちも真剣な面持ちで次の言葉を待った。
「お前が嫌だって言っても、ついて行くから。」
「嫌とは言ってないよ…。皆には伝えたの?」
伝えた。と答えた。彼曰く、短刀達はその事について了承してくれたらしい。
「分かった。」
「アンタ専用の風呂はもう沸かしてあるから、動けるんなら入って来なよ。」
立ち上がって、障子に手を掛けた時、こっちを向いてお風呂について入るように促した。
分かった。と一言いうと、障子を開けて部屋を出て行った。
★★★
その後から数日、加州が言う通り、和泉守さんと堀川君はすんなりと人間の体に慣れた。
秋田君や薬研君もしっかりではないが、人間の体に慣れていった。
「--、岩動!」
「呼ばれてるよ。」
後ろの席の同級生に制服を背中を突っつかれて、始めて数学担当の先生が名前を呼んでいるのに気が付いた。
「如何した?外に何かあったか?」
「い、いえ。何もないです!済みません。」
しっかりと聞いとかないと、センターに出るぞ。注意を一つ言って、そのまま黒板へ体を向ける先生。
すっかり忘れていたけど、ウチは受験生じゃん。なのに、審神者なんて…。
でも、大学みたいなのはココでも出来るらしいから、審神者はココで受験するんじゃ…。
結局、ココからは出られないんだね。本当に。