第8章 演練
太陽に反射した黒板に、白い文字が書かれていく。色々な数式が端から端まで埋め尽くしていく。
「ここがこうなるから、この数式を使う。」
「先生!そこの計算、間違ってると思います。」
年配にいってる数学担当の先生が、黒板を凝視してから、「ホントだ…。」と言って、書き直していく。ウチのクラスの人達はそれに笑う。
ウチもおっちょこちょいだと笑っていたけど、止めた。隣では加州が両目を瞑って、気持ちよさそうに寝ていた。
横目で観察してたけど、つまらなくなって、数日前の事を思い出す事にした。
★★★
数日前、案の定、力の使い過ぎで二度目の床につく事になった。目をあければ、ウチは自分の部屋にいた。
頭がぼーっとする感覚がありながら、体を起こして庭がある方向を見た。
「もう、夜になったんだ…。」
そういえば、夕飯を食べていないような。服だって、制服のままだ。
障子からは暗くなった影響で青白い光が、部屋に刺し込んで来る。怠い頭で障子を凝視していると、小さい人影が微かな足音と共に、訪ねてきた。
「あの…入っても、良いですか?」
声からにして、五虎退だった。影からは何かを両手に携えている。
「五虎退…?良いよ、遠慮しないで入ってきて。」
影は驚いた様子を見せてから、障子をゆっくり開けて顔を覗かせながら部屋へ入って来た。
「目が、覚めたんですね。あの…お夕飯を持ってきました。」
慎重に、手に持つお盆の上の皿を落とさないように、布団にいるウチの元に運んだ。
お皿からは湯気が立っていて、熱そうだった。汁の匂いがして中身をよく見ると、うどんだった。
「有難う。」
五虎退から受け取り、うどんを食べ始めようとした。でも、手に持った箸を置いて五虎退に顔を向けた。
「五虎退は、ご飯食べた?」
「はい…!皆さん、食べました。」
そっか。それだけ答えて、安心して食べる事にした。だって、皆が食べていなくて自分が先に食べるなんて、罪悪感しかない。
「薬研兄さんに、秋田君を手入れして下さって、あ、有難うございます!乱兄さんも前田君も、感謝してました。」
「良いんだよ。その二振りもご飯食べた?」
笑顔を見せて重傷を負っていた短刀達について、聞いてみた。刀なら、人間とは違って直ぐにご飯を食べれる。どんな怪我でも直してしまえば。