• テキストサイズ

審神者と刀剣と桜

第7章 初太刀・初脇差


「逃がす訳ないじゃん!!」

 後を追って、加州も駆けて行く。ヒールのある黒いブーツを履いているのに、速い。もう、敵短刀の後ろにいた。
 敵は加州に捕まったら終わりだと、言っているみたいに、全速力で飛んでいく。また距離が出来る。
 取り残された短刀達はその光景をただ茫然と見ていた。

「こ、怖ッ!!」
「あれって、いつもの加州なの…?」
「怒らせちゃいけないね…。」
「加州、はやいですね~。」
「う、うう…か、加州さん怖いいい…。」

 全刀、十刀十色な事を言う。五虎退はついに泣き出してしまった。いつもは、短刀達に優しい加州の新たな一面を見たような気がした。
 何でこうなったのか彼等は分からないが、ただ一つ分かるのはーー、

「後、追わないと、本丸に戻れないよ。」
「そうですよ!」
「追おうぜ!」
「薬研も行こう!」

 加州が帰りの道具を持っている為、本丸へ帰れなくなる。後を追わないと、この時代に取り残される事になる。
 その場に居る全刀はまだ後姿が見える加州の後を追って、走り駆けて行った。

★★★

 敵を角に追い詰め、自身を敵の額に向ける。相手は戦意喪失して、震えているような感じだった。

「おーい詰めた!もう、逃げらんないよね~?」

 影が射した顔に赤い目が光る。若干、敵は涙目になっている。
 このまま、葬ろうと刀を突き立てようとした瞬間、後ろの方から爆音が聞こえ、寸前で止めた。

「はあ?何――ッ!」

 突然の事に気をとられて目を離せば、追い詰めた敵は短刀を加州に向けて逃げた。何とか寸前で本体で受け止めて、また後を追う事になった。

「チョコチョコと…。」

 わなわな震え、目が座り始めていた。そんな加州の元に七人の人影が近づいて来た。

「加州ー!おいてかないでください!!」

 後を追っていた短刀達であった。やっと追いついたのか、皆肩で息をしている。

「今剣…皆、来たの?」
「来たの?じゃないよ!加州が帰る手段を持ってるんでしょ?僕達を置いて行くつもりだったの?」

 もう!!ぷんすかと、そんな効果音が聞こえてきそうな感じで怒る乱。

「何か…大きな音が聞こえた気がするんだけど。」
「そうなんだよね~。それに気をとられて、敵逃がしちゃった。」

 えっ…。全刀が加州を見上げる。そんな折にまた爆音が全刀の耳に流れ込んできた。
/ 146ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp