第7章 初太刀・初脇差
(あの敵短刀が何処へ行ったかは検討はついてるし…。実際、そっちに向かって逃げたからね。)
「ごめん。折角、走って来てもらったけど、また走るよ。」
「えええ~!!」
加州の言葉に全員が不満の声を上げる。それでも加州は走り始めた。短刀達はもう、渋々と言った感じで、走り始めた。
目指すは、爆音がした場所だ。
一方その頃の千隼はーー
「あん時の歳さんはーー、」
永遠と和泉守の主の武勇伝と言う名の自慢を聞かされていた。因みに寝れていない。前田も疲れの表情が見えていた。
★★★
「ーー、」
(話し声が聞こえる?誰か居るのか…。)
音の出所である場所に着き、物陰に身を潜めていた。結構な距離を走ったにも関わらず、加州は息を一つも乱していない。短刀達、特に薬研藤四郎は息が乱れていた。
加州が先頭に行き、後ろの仲間に手で制止するように指示を出す。
顔を出し、声の主を探していく。浅葱色の羽織は見えない事から当時の新撰組では無い事はうかがえた。
(じゃあ、誰なんだ…。)
よく、目を凝らしていく。すると、何かと戦っている人影を見つけた。何かが何なのか、先の方を見れば、それは歴史修正主義者だった。
「何で敵?俺達の他にも派遣してる本丸があるのか?それとも…。」
いまいちわからない状況に、観察するしかなかった。
「急に襲ってきて、君達は一体何なの?それに同じ様に人間の体を手に入れたなら、”兼さん”や”清光”、”安定”達だって人間になっている筈なのに、何で会えないの?」
敵は如何やら短刀のみだった。人影は慣れた手つきで相手の攻撃をかわしていく。隙があれば、攻撃を仕掛けるが敵が多い分上手く当たらない。
遠目だったが戦っている人物とその人物が言った台詞に、手にしている自身を落とそうとしていた。
(嘘だろ…。こんな事って…今日だけで、今日だけでーー、)
頬が濡れる感触がする。右目から涙が一つ零れている。
それは昔、加州が共に過ごしていた仲間。主は互いに違い、和泉守と同じ主の下に居た刀剣ーー。
加州は一瞬顔を伏せて、目を擦った。それから顔を上げ、走り出した。
「加州!?」
突然の事に短刀達は困惑の色を見せているが、加州の目には映っていない。
「堀川ーー”堀川国広”!!」
呼ばれた者は顔を振り向かせ、目を見開いて加州を見た。